障害者も昇進できるのか?多くの人がそう思ってしまうのではないでしょうか。
メンバーのよーすけは、視覚障害者として、昇進してマネージャーとして挑戦を続けたいという夢を持っていました。
しかし、周囲からは「マネージャーは無理だ」「視覚が必要になる」という声が多く、またそのような先例も少なく、昇進の壁を感じていました。
2度の昇進試験に挑戦しましたが、いずれも不合格となりました。
私の昇進不合格の経験を踏まえて、障害者が昇進するために必要なポイントを考えていきたいと思います。
別観点ですが、障害者が仕事の幅を広げ、活躍していくためには、それを理解して実行できる当事者のマネージャーも必要です。
これは世界でダイバーシティーやインクルージョンが重視されていることと同様だと思っています。
キャリアアップを目指す障害者、それを応援する職場の皆さん、人事部門の方々に読んでもらいたい記事です。
昇進への思い
私は、視覚障害者として、昇進してマネージャーとして挑戦を続けたいという夢を持っていました。
メンバーとしてさまざまな経験をしてきた中で、次は違った視野で物事を見てみたいと感じています。
このような思いは、転職する5年前も持っていました。
ぜひ次の記事も併せて読んでいただけると嬉しいです。
昇進はなぜ私に必要か
人を動かしたり、育てたり、サポートをする立場で自分も一緒に成長を続けていきたいという思いが芽生えてきました。
視覚障害があると、マネージャーは無理だとか、管理するためには視覚が必要になるだとかいう声を耳にすることが多かったです。
私から視覚障害という部品を取り払うことが簡単にできるのであればよいのですが、それが不可能な今、周囲からのそのような考えをどのように突破していけるかが課題でした。
反対や無理だと言われれば言われるほど、それを突破したくなるのが私です。
それに、メンバーとしてできることはもうしてきたという自負があります。
いつも助けてもらってばかりの私。
こんな私だからこそ、もっと周囲に貢献して、自分の成長を加速させたいという思いは、自然なことなのかもしれません。
視覚障害があると昇進は難しいのか
皆さんに伺いたいのですが、はたして、人を育てること、それを支援すること、管理することには見えていることが絶対条件なのでしょうか。
もちろん視力はあるにこしたことはありません。しかし、それを補う方法はたくさんあるはずです。
リモートワークが増えてきた今、メンバーを見守る方法は目の前で観察することだけが唯一の方法だとは思えません。
話をしたり、仕事の成果を見たり、声色を観察したりと、世の中には見えている人が想像しがたいヒントが私たち視覚障害者にはあります。
例えば、私は、メンバーの声のトーンや話し方から、その人の感情や仕事に対する意欲を読み取ることができます。
また、仕事の成果を分析することで、その人の強みや弱みを把握することができます。
このように、視覚以外の方法で情報を収集し、分析することで、マネジメントに必要な能力を十分に発揮することができると考えています。
具体的な方法として、三つ実践していることがあります。
1. 障害を補う方法を見つける
視覚障害の場合、マネジメントに必要な能力を十分に発揮するために、視覚以外の方法で情報を収集し、分析する能力を磨くことが重要です。具体的には、以下の方法が挙げられます。
- 話をしたり、仕事の成果を見たり、声色を観察したりといった方法で、メンバーの状況を把握する
- 音声認識やテキスト読み上げソフトなど、視覚に代わるツールを活用する
- 視覚以外の感覚を研ぎ澄ませる
2. バランスを意識する
視覚障害者であることを理由に、周囲から理解や支援を得られないと、仕事にやりがいを感じにくくなってしまいます。そのため、自分がどう見られているかを常に意識して、自分の強みを活かして、周囲から信頼を得ることを意識することが大切です。
具体的には、以下のようなことを心がけます。
- 自分の強みや弱みを把握し、それを素直に周囲に伝える
- 周囲の理解を得るために、積極的にコミュニケーションを取る(特に傾聴)
- 自分の弱みを補うことを意識して合った働き方を模索する
3. 上司と仲良くする
上司と仲良くすることで、仕事の相談やアドバイスを受けやすくなり、成長の機会を増やすことができます。対立していて良いことはありません。そのため、適切に情報提供をしたり、上司と同じ視点で俯瞰したりと、単に言いなりになるのではなく、「こいつすごいな!」と思わせて信頼してもらう努力を継続することが大切です。
具体的には、以下のようなことを心がけましょう。
- 上司の仕事を理解し、上司の期待に応えようと努力する
- 上司と顧客の両方の視点に立って物事を考える
- 上司の信頼を得るために、適切に報告して、成果を出す
障害者の昇進の現状
ところで、雇用されている障害者全体の80%が昇進を含むキャリアアップを望んでいる一方で、障害者全体の26%しか正社員になれていないといいます。
つまり、下表のとおり、キャリアアップの対象になるのはこの26%しかいないという現実です。
状況 | 障害者 | 健常者 |
---|---|---|
正規 (正社員) | 26% | 62% |
非正規 (契約社員等) | 74% | 38% |
上記の表は、日本における障害者と健常者の雇用状況を示しています。With Blindでわかりやすく一部を加工しています。
パーセンテージは、正規の雇用者と非正規の雇用者の割合を表しています。障害者の中で正規雇用者は26%であり、非正規雇用者は74%です。健常者の中で正規雇用者は62%であり、非正規雇用者は38%です。
この26%の障害者の正社員のうち、90%が一般職であるといいます。
逆に言えば、僅か10%しか、障害者の管理職はいないということです。
健常者の正規雇用の割合は62%です。
もちろん、単純比較はできませんが、正社員になっている割合だけでも差がすごいことがわかっていただけるのではないかと思います。
障害者が正社員として働き、昇進を含むキャリアアップをするにはどれほど難しいのかが数値からおわかりいただけたのではないでしょうか。
*望んで非正規になっている人たちを批判する目的はなく、今回は昇進機会に焦点を当てていますので、誤解がないといいなと思っています。
この現状を改善するためには、企業側の障害者雇用に対する意識改革や、障害者自身が昇進を目指すための努力が不可欠です。
【参考】株式会社ゼネラルパートナーズ 障害者総合研究所調べ
2度の昇進試験への挑戦と挫折
私の経験もご紹介します。
2022年12月、転職して4年目の現職で昇進試験に初挑戦しました。
私の会社は一定程度の職歴があれば、誰でも幹部候補への登竜門である昇進試験に受験できるのが特徴です。
試験は一次試験として、ペーパーテスト、二次試験として小論文と面接があります。
そして、日ごろの勤務状況も合否に影響します。
この年の昇進試験の結果は、残念ながら不合格でした。
不安と失望の中、まだ経験も浅いんだから、来年に向けて頑張ろうと決意して自分を鼓舞したことを覚えています。
しかし、翌年もまた不合格となりました。
これでは、いつまでも昇進のチャンスをつかむことができず、自分のキャリアアップにも限界があると感じました。
自問自答の期間
私は、仕事への本当の思いを見つめ直すことにしました。
具体的には、
- 本当にやりたかった仕事をしていたか
- 障害がある私は公平な競争で同じスタートラインに立てているのか
- 管理職候補として評価されていない辛さをどうカバーするか
- 劇的な昇給が見込めない中、家族を養う現実をどう受け止めるか
まとめ
いろいろと書いてきましたが、何度も昇進試験に落ちた私ですら、視覚障害者も昇進することは可能と信じています。
そのためには、既に紹介した以下の3つのポイントを押さえることが何よりも重要と考えます。
- 障害を補う方法を見つける:視覚障害の場合、視覚以外の方法で情報を収集し、分析する能力を磨く
- バランスを意識する:自分がどう見られているかを常に意識して、自分の強みを活かして、周囲から信頼を得ることを頑張る
- 上司と仲良くする:適切に情報提供をしたり、上司と同じ視点で俯瞰したりと、単に言いなりになるのではなく、「こいつすごいな!」と思わせる努力を継続する
では私はというと、上記の努力は欠かさず重ねつつ、新たなステージに向かうことを考えています。
具体的には、転職や起業です。
もっと具体的な構想については、またお話ししたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
それぞれの場で、自分が持っている力を存分に発揮できますように。
この記事が少しでも役に立てば嬉しいです。