視覚障害者にとって、移動の自由は生活の質を大きく左右する要素の一つです。
その場に行って、何かをするという体験や、その場に行くまでの過程で何かを楽しむという体験は健常者にとっては当たり前ですが、視覚障害者にとってはそうではないケースも。
私たち視覚障害者は、初めての目的地に単独でたどり着くには、大変な労力を必要とします。
地図が即時に読めるわけでもないし、街並みや状況を把握できるわけでもないため、周囲の人たちの理解と助けを必要としています。
そんな視覚障害者にとって、追い風がやってきました!
白杖や盲導犬といった従来の補助具に加えて、現代の技術進化により、視覚障害者向けのナビゲーションツールが劇的に発展しています。
今回は、2024年9月現在の世界で提供されているサービスについて、最新のナビゲーションツールやスマートフォンアプリに焦点を当て、道案内や障害物検知の革新について深く掘り下げていきます。
これらのツールは、視覚障害者が安全かつ自立的に移動するためのサポートを提供し、日常生活を支える大きな役割を果たしてくれるはずです。
ただし、課題もありますので、皆さんと一緒に考えていきましょう。
あしらせデバイス – 足元で感じるナビゲーションの新境地
あしらせデバイスは、日本発の画期的なナビゲーションツールで、足に装着することで道案内を振動で伝えるユニークなデバイスです。
このデバイスは、靴に取り付け、GPSとセンサーを組み合わせてユーザーの動きを解析します。
誤解したくないのは、単なる振動を足に伝えるだけのデバイスではない点です。
あしらせデバイスの最大の特徴は、聴覚や手を使わずに足元で振動を通じて進行方向を感じ取れる点です。
それも、超緻密なGPSと連動しているので、誤差も少ないとのこと。
右に曲がる際には右足に振動が伝わり、直進の場合は両足に均等な振動が伝わるため、非常に直感的です。
今歩いているルートが正しいか否かも、足に伝わる振動で教えてくれるのでわかりやすい。
また、あしらせデバイスは、スマートフォンの専用アプリと連動しており、ユーザーが目的地を設定すると、自動的に最適なルートを計算し、その経路に従って案内します。
開発側では、視覚障害者が安全で快適に歩けるルートを日々改善したり、AI認識機能を使って目的地に確実に到着できるためのサポートを提供しているというのだから、とても期待できるし、ありがたい。
【このデバイスの特徴】
このデバイスの特徴的な点は、騒音がある場所や手がふさがっている場合でも、足元で簡単に道案内を受け取れることです。
さらに、スマートフォンのアプリからも音声フィードバックがありますので、目的地の道中にある店舗情報や、横断歩道の情報なども受け取れるのも嬉しい点です。
視覚障害者にとって、白杖や荷物を持ちながらの移動が容易になるため、手軽かつ効率的なツールとして注目されています。
このデバイスは非課税で54,000円。これに毎月の500円超の費用がかかります。
高額だとか、毎月のサブスクリプション費用が気になるという声もありますが、このデバイスとサービスにしては適正価格なのかなと感じています。
【当事者目線での感想】
まず驚いたのが、これだけの機能があるのに、軽量で靴に装着しても違和感がほとんどない点です。
素材も柔らかく、靴の中に振動するためのデバイスが入っていることを忘れるぐらいでした。
靴の側面に固定するデバイスも手のひらよりも小さいです。
商品の盗難防止タグ程度の大きさですので、靴に装着していても気にならないレベルでした。
9月末までキャンペーンをやっているんだよね。よーすけの毎日の晩酌(カルピス)を我慢すれば購入できそうだね。
「思っていた以上に軽量だし、靴に装着しているのを忘れてしまう・・・・」
— Vi-logでもっと評価を見る
【公式ページ】
Eye Naviアプリ – スマートフォンを使った詳細な音声ナビゲーション
つぎに紹介する「Eye Naviアプリ」は、スマートフォンをベースにした音声ナビゲーションアプリで、GPSやデジタルマップ技術を駆使して、詳細な道案内を提供します。
このアプリの大きな利点は、スマートフォンの背面カメラを使って、目の前の障害物などの状況や、通り道にあるお店の名前をリアルタイムで音声でフィードバックしてくれる点です。
信号の色も教えてくれます。
【このアプリの特徴】
具体的な機能としては、電柱やポールの検知、信号の色、交差点や点字ブロックの検知、視覚障害者にとって必要な細かい情報を伝える音声ガイド機能があります。
さらに、素晴らしいのが、これらの音声ナビゲーションをカスタマイズできる点です。
これにより、自分に合ったナビゲーション設定で、あまり迷うことなく移動が可能です。
もっと驚くべきことが、これらのアプリの機能が無料で利用できる点です。
【当事者目線での感想】
Eye Naviアプリは、ユーザーにとって簡単に操作できるインターフェースを持ちながらも、非常に精度の高いナビゲーションを提供しています。
初めての場所への外出でも、視覚障害者にとって有効なサポートを提供してくれます。
通り道にある店も教えてくれるので便利です。
人の検知もできるので、迷って誰かに道を聞きたい!と思ったら、このアプリで探すことができます。
通りすがりの人の好さも判断してくれるとさらにいいんだけどな。
親切な人ばかりなんだから、そんな機能はいらないよね。
「道案内と散歩コースがある視覚障害者向けのナビゲーション・・・」
— Vi-logでもっと評価を見る
AIスーツケース – AIがサポートする移動
「AIスーツケース」は、視覚障害者を目的地まで安全に誘導してくれるロボットで、AI技術を活用して障害物検知や道案内を行います。
このスーツケースは、内蔵されたカメラやセンサーを使って周囲の環境をリアルタイムでスキャンし、ユーザーを誘導します。
【このデバイスの特徴】
なんといっても、未知をスーツケースが案内してくれることは画期的です。
人込みを避けたり、障害物を避けたりすることもスーツケースがしてくれるので、私たちはスーツケースに手を添えているだけで、それ以上何かをすることはないのが素晴らしい。
音声フィードバックもあるので、さらに安心です。
早く一般道路でも使えるようにならないかなと期待しています。
【当事者目線での感想】
体験して一番衝撃的だったのが、単独で歩きながら、人と話ができることです。
これって見えてる人には普通のことなのかもだけど、視覚障害がある俺はなかなか異例なこと。
視覚障害者が単独で歩行する場合、目の前の状況に全集中なので、会話に100%集中できることはほぼありません。
だから、自分は人にガイドされていない限り、歩きながら話すという経験はしてこなかったと思います。でも、このスーツケースならそれができるんです。
これだけでも素晴らしいけど、いろんな付帯機能もあるので、ぜひ体験してほしい!
「自動運転技術が用いられており、人を避けてくれるのも自動・・・」
— Vi-logでもっと評価を見る
世界のナビゲーションツール – 進化を続ける技術
視覚障害者向けのナビゲーションツールは、あしらせデバイスやEye Navi、AIスーツケースだけではありません。
日本以外に目を向けてみましょう。
世界中でさまざまな技術が開発され、より多様なニーズに応える製品が次々と登場しています。
その中でも特に注目されるのが、白杖やAIカメラと連携したナビゲーションツールです。
例えば、「WeWALKスマートケイン」は、白杖と連動して使用することで、振動や音声で目的地までナビゲーションしてくれるデバイスです。
【WeWALKスマートケインの特徴】
通常の白杖では感知しにくい頭上の障害物や突き出した看板なども感知できるため、より安全な移動をサポートしてくれます。
このデバイスはスマートフォンと連携しており、進行方向の案内もしてくれるため、外出時の不安を大幅に軽減してくれます。
価格も高くないよね。800ドル弱なので、頑張れば手が届きそう!
YouTubeで具体的な説明が見れるのでご覧ください。
なお、英語ですが、理解することは難しくないと思います。
【こちらの記事でも紹介しています】
【公式ページ】
「スマート白杖とアプリとが連携して・・・」
— Vi-logでもっと評価を見る
AIが目の前の状況を説明しながらナビしてくれるデバイス
スイスで開発されたNOAというデバイスは、ユーザーの体に装着してAIカメラを使い、視覚情報をリアルタイムで解析することで、道案内や周囲の状況を音声で伝える技術を持っています。
【NOAデバイスの特徴】
これのすごい点は、バス停や、建物の入り口を探す機能があったり、空席を探す機能があったりすることです。
電車やバスで空席を探すのはとても苦労するので、この機能はとてもありがたい。
驚いたのは販売価格。日本円だと40万円以上しそう。
【日本語で紹介されているページ】
【公式ページ】
未来のナビゲーション技術 – さらなる進化を見据えて
視覚障害者向けのナビゲーションツールは、今後もさらなる進化を遂げるものと確信しています。
現在でも、GPSやAI、センサー技術を駆使して精度の高い案内を提供していますが、将来的には、より多くの環境に適応し、利用者が直面する様々な状況に対処できるものになっていくと思います。
世界ではAIを使ったツールが様々出てきていますし、その競争も激化しています。
一方、我々視覚障害者はどうでしょうか。
新しい技術に適応するためのスキルや知識は十分でしょうか。
そして、これらの先進的な技術をやすやすと購入できる財力はあるでしょうか。
自分たちの生活をより便利で楽しいものにするためには、私たち視覚障害者側の能力開発、所得アップも絶対的に大切です。
これらの技術がもっともっと前に進むよう、金銭的にも技術的にもサポートできる当事者でありたいと思っています。
そのためにも、私たちのオンラインスクールを活用いただけたら嬉しいです。
【受講者には特典も】視覚障害者も健常者も学べる「オンラインスクールWith Blind」について
*本記事での画像は各社のプレスリリースから引用しています。
*記事内容に誤りや誤認がありましたらお問い合わせフォームからご連絡ください。