私は、9年前に子どもを妊娠・出産しました。
視覚に障害があってもなくても、子どもを妊娠・出産することは一大イベントです。不安なことや分からないことがたくさん出てきて、友人や知人に相談したり、情報を調べたりしました。
この記事では、視覚障害の弱視(ロービジョン)である私が、妊娠・出産を経験して初めての赤ちゃん育児をする中で、やってよかったことをまとめました。
同じような悩みを抱える人たちの役に立てばうれしいです。
また、視覚障害のある母になる際に役立つ制度についても紹介します。
この記事がおすすめな人
- 視覚障害があってこれから妊娠・出産・育児を控えている人
- 視覚障害があって結婚や子育てに不安を感じている人
- 見えなくなっていく将来に不安や心配を感じている人
- 視覚障害がある家族や友人を持つ支援者で、視覚障害がある人がどのように制度を利用して妊娠・子育てを行っているかを知りたい人
ではさっそくやってよかったことを紹介します!
準備その1:同じ弱視の友人たちに会って話を聞く
お腹がだいぶ大きくなり、安定期に入った妊娠7か月頃、子どもの頃から親しくしている弱視の友人3人に会って食事をする機会がありました。
当時、妊娠・出産・育児を経験していたのは、そのうちの一人。
同じくらいの視力である彼女の経験談を聞くことで、赤ちゃんがいる自分の生活がイメージしやすくなりました。
また、子どもが生まれると今までのような行動の仕方ができないかもしれないという事実を聞いて、弱視の母になる実感がとても高まりました。
私は、視覚障害があっても、一人でどこへでも行く非常にアクティブな性格です。
一人で歩くことに慣れているとはいえ、視力は0.01ほど。
あまり見えていないことは事実です。
赤ちゃんのうちはベビーカーを押したり、抱っこひもで歩かなくてはなりません。
視覚障害がなく、見えていても行動しづらくなる状況であることは間違いありません。
この友人たちとの会話で学んだのは、視覚障害があるとなおのこと、通常と同じような行動はできないかもしれないと想定することでした。
ただ、「お腹が大きくなると足元が見えないよ」と言ったら、「元々足元見えてないから変わらないって!」と笑い飛ばされたことで、心配しすぎずこれまで通り気を付ければいいんだと思えました。
友人たちと話したこと、そして状況や立場は違えど同じ視覚障害のある友人たちの日々の生活を工夫しながら努力し、充実させていることを知ることができたことで、不安でいっぱいだった心が前向きになりました。
準備その2:障害者総合支援法による育児支援の形を知る
友人たちとの会話で、障害者総合支援法について詳しく説明してもらいました。
障害者総合支援法では、赤ちゃん育児を手伝ってくれる家事援助や、視覚障害者の外出をサポートしてくれる同行援護などの福祉サービスを利用できます。
友人たちに話を聞くまでは、これらのサービスが存在することも知らなかったので、当然このようなサービスを利用するということを全く考えていませんでした。
また、このようなサービスを利用したいとなっても、すぐには利用できず、準備に時間を要することも知りました。
同じ経験をしている友人のアドバイスは大変有り難いものでした。
障害者総合支援法とは
障害者総合支援法は、障害がある人が日常生活や社会生活を営めるよう、総合的に支援するために規定された法律です。
育児も含めた日常生活や社会生活において、必要な障害福祉サービスを提供し、障害者及び障害児の福祉の増進を図ることを目的としています。
ここで最も大切なのは、育児が日常生活または社会生活の中に含まれていることです。
障害があっても育児をしたいというニーズは当然だし、それが実現できる社会でないとですよね。障害があることで育児を困難としている社会制度そのものに問題があるならば、法律でそれを除去するための支援を整えるということは合理的な考えだと思う。
この法律の理念は、障害の有無にかかわらず、全ての国民が基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重され、共生する社会を実現することです。
すなわち、障害がない人が有する選択肢について、障害がある人も可能な限り持てるようにしようということです。
この考えの下、各種支援をおこなっていると理解することができます。
障害がある人の育児支援の具体的内容とは
障害のある人の育児支援について、厚生労働省のウェブサイトに次のような説明があります。
障害者総合支援法上の居宅介護(家事援助)等の業務に含まれる「育児支援」の取扱いについて(令和3年厚生労働省事務連絡)
この通知内容によると、次の三つの条件に全て該当する場合には支援が受けられます。
- 障害によって家事や付き添いが困難な場合
- 利用者の子どもが一人では対応できない場合
- 他の家族等による支援が受けられない場合
上述の三つの要件に該当する場合には、次のようなものが支援の対象となります。
- 沐浴や授乳
- 乳児の健康把握の補助
- 児童の健康な発達、特に言語発達を促進する視点からの支援
- 保育所・学校等からの連絡帳の手話代読、助言、保育所・学校等への連絡援助
- 子ども分の掃除、洗濯、調理
- 子どもが通院する場合の付き添い
- 子どもが保育所(場合によっては幼稚園)へ通園する場合の送迎
なお、これらの支援はあくまで具体例であり、個々の状況に応じて柔軟に対応されるということです。
同行援護とは
これまでは家事援助の話をしてきましたが、ここでは外出時などに支援が受けられる方法について紹介します。
まずは、同公園後とは何かを紹介します。
同行援護とは、視覚障害等により移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいいます。
日常生活を過ごす上で必要な買い物や、外出の際に使うことができる同行援護サービス。
育児をする上で重要な役割を果たします。
次回の記事では、育児支援と同行援護の体験談をご紹介したいと思います。
準備その3:役所の福祉課で障害福祉サービス(育児支援・同行援護)の利用手続きをする
友人からのアドバイスを受け、役所で上記で紹介した障害福祉サービスの利用手続きをすぐに行いました。
しかし、障害福祉サービスを受けるまでには数か月の時間がかかります。
医師の診断書が必要であったり、ケアマネージャーや利用する事業所との面談も行われたりします。
そして、事業所がすんなり決まるとは限りません。
これらの手続きは住んでいる自治体によって異なるかもしれませんが、出産が決まったら、早いうちに手続きを済ませることをおすすめします。
障害福祉サービスの利用手続きの流れを厚生労働省のウェブサイトで確認できます。
準備その4:病院関係者にしっかりと自分の障害について伝える
出産は病院スタッフの協力体制が何よりも大切です。
妊婦検診で利用する病院や出産予定の病院には、自分の視覚障害について詳しく伝えました。
通常時なら冷静に対応できることも、出産というイレギュラーな場面ではどんな状況になるかわからず不安に感じていました。
そこで病院のスタッフの皆さんには、できるだけ詳しく私の見え方やどのような配慮をしてほしいかを伝えました。
これにより、病院スタッフと一緒に考え、妊娠・出産の準備を進めることができました。
例えば、次のような配慮を行ってもらうことができました。
- 大切なことを私に伝える際には、紙に大きな文字で書いたものを見せてもらいながら話してもらうこと
- 赤ちゃんのお世話の方法を目の前で見えるように教えてもらうこと
- ミルクを哺乳瓶のどこまで入れれば良いのかよく見えないため、哺乳瓶にマジックで見やすい目盛りをつけてもらうこと
これらを含め、スタッフ全員で最大限の工夫をしていただきました。
サポートしてくださる方々に理解していただくことで、安心・安全に赤ちゃんを出産することができ、自分の障害について丁寧に伝えることの大切さを身に染みて感じました。
まとめ
弱視の私の妊娠・出産時に、やっておいてよかったことを紹介しました。
友人たちとの話で情報を得て、前向きな気持ちをもらいました。
妊娠・出産を控えるまで知らなかった障害福祉サービスを知り、余裕を持って手続きをすることで、不安が少し和らぎました。
病院スタッフに自分の障害を伝えることによって、適切な配慮をしてもらうことができました。
ぜひ、参考にしていただけたら幸いです。
次回の私の記事では、実際に育児支援や同行援護を利用した経験談をお伝えします。